「判例道場」第7回

【第6回解答】

労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常であり、労働者がこれを経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。

〔選択肢〕

B ① 事業の正常な運営 ② 労働者の生活 ③ 経営状況 ④ 職場規律の維持

C ① 互譲の手続 ② 事前の調整 ③ 労使協議 ④ 団体交渉

 

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「普通」
  • 解答根拠

最判平成4.6.23「時事通信社事件」

  • 事案概要

労働者Xは、会社Aの科学技術の専門知識を必要とする分野の記者クラブで記者として勤務していたが、Xからなされた1か月間の連続年次有給休暇の申請に対して、会社Aは、記者クラブは労働者Xのみの単独配置であって、1か月間も専門記者が不在すれば取材報道に支障をきたすおそれがあり、代替記者を配置する余裕もないことを理由として、指定された1か月間の年次有給休暇を2週間ずつ2回に分けて取得するよう時季変更権を行使したため、労働者Xがその時季変更権の行使は無効であるとして訴えた事案

  • 論点

長期連続休暇の請求があった場合、使用者は明確な理由がなくても時季変更権を行使できるか

  • 結論

できる(労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。)

【第7回問題】

賞与の対象期間の出勤率が90%以上であることを賞与の支給要件とする就業規則の規定における出勤率の算定に当たり、労働基準法第65条の定める産前産後休業等を出勤日数に含めない取扱いについて、同条の趣旨に照らすと、これにより産前産後休業の取得の権利等の行使を抑制し、ひいては労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り、 D として無効となる。

〔選択肢〕

① 権利の濫用 ② 公序に反するもの ③ 不法行為 ④ 信義に反するもの

前の記事

「判例道場」第6回

次の記事

「判例道場」第8回