「判例道場」第10回

【第9回解答】

臨床研修は、医師の資質向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。

〔選択肢〕

C ① 強制的 ② 不可避的 ③ 附随的 ④ 一般的

D ① 開設者の指揮監督の下に ② 研修計画に従って ③ 営利目的のために ④ 業務の一環として

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「普通」
  • 解答根拠

最判平成17.6.3「関西医科大学事件」

  • 事案概要

A病院において臨床研修を受けていた研修医Xに対して、A病院は「その勤務はあくまでも実習教育である」ことを理由に、最低賃金額に達しない金員しか支払っていなかったため、X(その後Xは、過労が原因の心筋梗塞のため死亡したため、実際はその遺族)が「実態は労働者であった」として、最低賃金額との差額の支払いを求めて訴えた事案

  • 論点

研修医は、最低賃金の適用を受ける(=労働基準法上の)労働者か

  • 結論

最低賃金の適用を受ける労働者である(臨床研修は、医師の資質向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、臨床研修指導医の下に医療行為に従事することを予定しており、これらの行為は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有する。したがって、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、当該研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。)

 

【第10回問題】

本件退職金は、就業規則においてその支給条件が予め明確に規定され、Y会社が当然にその支払義務を負うものというべきであるから、労働基準法11条の『労働の対償』としての賃金に該当し、したがって、その支払については、同法24条1項本文の定めるいわゆる全額払の原則が適用されるものと解するのが相当である。全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の E をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきであるから、本件のように、労働者たるXが退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、全額払の原則が意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない。

〔選択肢〕

① 職業生活 ② 人たるに値する生活 ③ 社会的身分 ④ 経済生活

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