「判例道場」第21回

【第20回解答】

元来、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」(労働基準法2条1項)が、多数の労働者を使用する近代企業において、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができる。

〔選択肢〕

D ① 職場規律 ② 労働契約 ③ 合意文書 ④ 社会的規範

E ① 合理的な ② 合法的な ③ 公序良俗に反しない ④ 適正な

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「普通」
  • 解答根拠

最判昭和43.12.25「秋北バス事件」

  • 事案概要

従来定年制の無かった会社Aで、「55歳定年制」を新設する就業規則の改正に伴い、改正時すでに55歳に達していたために解雇された従業員Xが、本人の同意のない就業規則の改正には拘束力はないため、解雇は無効であるとして訴えた事案

  • 論点

就業規則の改訂により定年制を新設し、定年を超えていることを理由に労働者を解雇することは許されるか

  • 結論

許される(元来、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」(労働基準法2条1項)が、多数の労働者を使用する近代企業においては、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範(※)としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができる。〔…中略…〕

右に説示したように、就業規則は、当該事業場内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められるに至っているものと解すべきであるから、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである。

※)「社会的規範」とは…その集団の中で守られるべきルールや規律をいう。

〔第21回問題〕

労働者の賃金は、労働者の生活を支える重要な財源で、日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることは、労働政策の上から極めて必要なことであり、労働基準法24条1項が、賃金は同項但書の場合を除き A 労働者に支払わなければならない旨を規定しているのも、右にのべた趣旨を、その法意とするものというべきである。

しからば同条項は、労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することを許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が B を原因としたものであっても変りはない。

〔選択肢〕

A ① その全額を直接 ② その全額を通貨で ③ 毎月1回以上一定の期日を定めて④ 通貨で直接

B ① 不作為 ② 不法行為 ③ 故意の犯罪行為 ④ 重大な過失

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