「判例道場」第23回

【第22回解答】

雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労働基準法34条3項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であって、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば同項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。

しかしながら、休憩時間の自由利用といっても、それは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な制約を免れることはできない。

また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序 維持の要請に基づく規律による制約は免れない。

〔選択肢〕

C ① 労働契約上の義務を免れ ② 就業場所を離れ ③ 使用者の指揮命令権の拘束を離れ ④ 私的時間として

D ① 健全な労使関係 ② 快適な職場環境 ③ 企業活動 ④ 企業秩序

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「普通」
  • 解答根拠

最判昭和52.12.13「目黒電報電話局事件」

  • 事案概要

休憩時間中に職場内で「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と題するビラを配布(一種の政治活動を)した職員Xに対し、会社Aが行った懲戒処分(戒告処分)に対して、職員Xが労働基準法34条3項(休憩の自由利用)に反するとして、その処分の無効を訴えた事案

  • 論点

休憩時間中に職場内で政治活動等をしたことを理由とする懲戒処分は有効か

  • 結論

有効(休憩時間の自由利用といってもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。〔…中略…〕休憩時間中であっても、企業の運営に支障を及ぼし企業秩序を乱すおそれがあり、許可を得ないでその配布をすることはA社就業規則5条6項に反し許されるべきものではないから、これをとらえて懲戒処分の対象としても、労働基準法34条3項に違反するものではない。)

〔第23回問題〕

原審の確定した事実関係のもとにおいては、Y社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められない。

したがって、Y社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が E 的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。

〔選択肢〕

① 功労報償 ② 成果給 ③ 老後の生活保障 ④ 賃金の後払い

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