「本試験択一式の複数解答」について

択一式・健康保険法の問6(AとE)問10(AとE)が複数解答となりました。おそらく、作問者としては、どちらも、Eが本来の正解肢(誤りの肢)として出題したものと思われます。

では、何故、それぞれ「A」も正解肢(誤りの肢)となったのか、について解説します。

 

1.問6のAについて

【問題】

保険者は、健康保険において給付事由が第三者の行為によって生じた事故について保険給付を行ったときは、その給付の価額(当該保険給付が療養の給付であるときは、当該療養の給付に要する費用の額から当該療養の給付に関し被保険者が負担しなければならない一部負担金に相当する額を控除した額)の限度において、保険給付を受ける権利を有する者(当該給付事由が被保険者の被扶養者について生じた場合には、当該被扶養者を含む。)が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる。

 

【解説】

題材となっているのは、「第三者行為災害=損害賠償との調整」です。

損害賠償との調整については、2つのパターンが規定されています。

1つは、「先に保険給付が行われたとき」に、保険者が第三者に対して、その価額の限度において損害賠償の請求権を取得するというものです。(「求償」といいます。)

もう1つは、「先に損害賠償を受けたとき」に、保険者が、その価額の限度において保険給付を行う責めを免れるというものです。(「控除」といいます。)

 

改めて問題文をみると、

「保険者は、健康保険において給付事由が第三者の行為によって生じた事故について保険給付を行ったときは、その給付の価額(当該保険給付が療養の給付であるときは、当該療養の給付に要する費用の額から当該療養の給付に関し被保険者が負担しなければならない一部負担金に相当する額を控除した額)の限度において、

ここまでは、「求償」に繋がる文章になっているにもかかわらず、

「保険給付を受ける権利を有する者(当該給付事由が被保険者の被扶養者について生じた場合には、当該被扶養者を含む。)が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる。

となっており、「控除」の文章で終わっています。

したがって、「誤り」ということになります。(意図してこのような問題を作成することは考えられないため、単純な作問ミスかと思われます。)

 

2.問10のAについて

【問題】

3月31日に会社を退職し、翌日に健康保険の被保険者資格を喪失した者が、4月20日に任意継続被保険者の資格取得届を提出すると同時に、4月分から翌年3月分までの保険料をまとめて前納することを申し出た。この場合、4月分は前納保険料の対象とはならないが、5月分から翌年の3月分までの保険料は、4月末日までに払い込むことで、前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する)を控除した額となる。

 

【解説】

題材となっているのは、「任意継続被保険者の保険料の前納」です。

「前納すべき保険料の額=各月の保険料の合計額-各月の割引額の合計額」ですが、よくよく問題文を読むと、「前納すべき保険料の額=各月の保険料の合計額-(各月の保険料の合計額-各月の割引額の合計額)」となっています。

すなわち、前納すべき保険料の額は、「各月の割引額の合計額」となっているため、「誤り」ということになります。(意図してこのような問題を作成することは考えられないため、単純な作問ミスかと思われます。)

【問題文(端数処理の記述をカット)で検証】

前納に係る期間の各月の保険料の額の合計額から、

その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額を控除した額

となる。

 

最後に、当講座の本試験解答速報及び本試験解説会において、上記のこと(複数解答)に気が付かなかったこと(結果として、誤った情報をお伝えしたこと)を、お詫び申し上げます。