ステイホームワーク第3回(解答)
労働基準法
●賃金の支払い
問21 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるが、この場合の労働者の同意については必ずしも書面による必要はない。
答21 〇 労働者の同意については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わないこととされている。
【コメント】
論点は、「形式は問わないが必ず個別に」同意を得ることです。
問22 使用者は、労働者が出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるため請求する場合においては、支払期日前であっても、次回の賃金支払日に支払うべき賃金を支払わなければならない。
答22 × 設問の「非常時払」の規定に基づき支払わなければならない賃金は、既往の労働に対する部分であり、未だ労務の提供のない部分についてまで支払う必要はない。(法25条)
【コメント】
「既往の労働」という文言は、選択式も意識してください。
問23 最高裁判所の判例によると、適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、法24条1項ただし書によって除外される場合にあたらなくても、その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば同項の禁止するところではないと解されている。
答23 〇 過払いとなった賃金を、過払いとなった時期とごく近いその後の時期において、労働者の経済生活の安定をおびやかさない程度の額で相殺することは、賃金一部控除の労使協定の締結がなくても許されるものとされている。(最判昭和44.12.18「福島県教組事件」)
【コメント】
いわゆる「賃金の過払い調整」をするためには、①行使の時期が近接していること(例えば、前月分を今月分で)、②事前にお知らせをして調整する方法をとること、③金額が大きい場合は分割して調整すること、の3つの要件を満たす必要があります。
問24 割増賃金の計算の便宜上、1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる措置は法違反として取り扱わないこととされている。
答24 〇 設問中の「法違反」とは、具体的には「賃金の全額払い違反」のことを指す。(昭和63.3.14基発150号)
【コメント】
設問の「1か月」を「1日」にすり替えて来るので注意しましょう!
問25 法26条に定める休業手当は、同条に係る休業期間中において、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、支給する義務は生じない。
答25 〇 労働協約、就業規則又は労働契約によって休日と定められている日については、そもそも労働義務がない日であることから、休業手当を支給する義務は生じない。(法26条、昭和24.3.22基収4077号)
【コメント】
常識的に考えてもそうですね。労働基準法は、全科目の中で唯一「覚えていないことでもその場で考えて正解を導き出せることがある」科目です。最後まであきらめずに食らいつきましょう。
●労働契約
問26 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対し賃金、労働時間その他の労働条件をすべて書面の交付等により明示しなければならない。
答26 × 書面の交付等により明示することが義務付けられているのは、絶対的明示事項(昇給に関する事項を除く。)についてであり、その他の労働条件については、必ずしも書面の交付等により明示する必要はない。(法15条1項、則5条)
【コメント】
この問題に限らず、「すべて」という言葉にビビッと反応してください。
問27 使用者は、労働者が高度の専門的知識等を有していても、当該労働者が当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就くことがない場合は、契約期間を5年とする労働契約を締結してはならない。
答27 〇 (法14条1項、平成15.10.22基発1022001号)
【コメント】
契約期間の上限が「5年」とされる「満60歳以上の労働者」については、他に何も制限はありませんが、「高度の専門的知識等を有する労働者」には設問の制限があります。
問28 法15条1項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
答28 〇 (法15条2項)
【コメント】
「即時に」というところも大切な論点です。
問29 法16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」こととされているが、本条は、金額を予定することを禁止するのであって、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではない。
答29 〇 (法16条、昭和22.9.13発基17号)
【コメント】
頻出論点です。法16条(賠償予定の禁止)は、とにかく「何事も起こっていないのに、賠償金額を予定する」こと(不当拘束)を禁じています。
問30 法17条では、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」こととされているが、労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融、弁済期の繰上等で明らかに身分的拘束を伴わないものは、労働することを条件とする債権には含まれない。
答30 〇 (法17条、昭和33.2.13基発90号)
【コメント】
「労働することを条件とする」というところと、「相殺(使用者が一方的に給与等から差し引く)」というところがポイントです。