令和6年度本試験択一式解答・解説(労働基準法・労働安全衛生法)
注)この解答・解説は、速報段階のものであり、後日変更する場合があります。また、試験機関による解答について保証するものではありません。
〔問 1〕 正解 D
A × 「人たるに値する生活」については、その標準家族(その範囲はその時その社会の一般通念によって理解されるべきもの)の生活を含めて考えることとされているが、具体的に「賃金の最低額を保障することによる最低限度の生活」とする行政解釈は存在しない。(法1条、昭和22.9.13発基17号、昭和22.11.27基発401号)
B × 「法3条は、労働者の信条によって賃金、労働時間その他の労働条件につき差別することを禁止しているが、これは、雇入れ後における労働条件の制限であって、雇入れそのものを制約する規定ではない。」とするのが、最高裁判所の判例である。(法3条、最判昭和48.12.12三菱樹脂本採用拒否事件)
C × 法4条にいう「女性であることを理由として」とは、労働者が女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として又は当該事業場において女性労働者が一般的又は平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者でないこと等を理由とすることの意であり、これらを理由として、女性労働者に対し賃金に差別をつけることは違法(法4条違反)である。(法4条、昭和22.9.13発基17号、平成9.9.25基発648号)
D 〇 なお、移籍型出向の出向労働者については、出向先とのみ労働契約関係があるので、出向先についてのみ労働基準法等の適用がある。(法10条、平成11.3.31基発168号)
E × 労働協約によってではないが、前例若しくは慣習として、その支給が期待されている貨幣賃金の代わりに支給されるもの(実物給与)は、賃金として取り扱うこととされている。(法11条、昭和22.12.9基発452号)
〔問 2〕 正解 C(ア〇 イ× ウ〇)
ア 〇 また、場所的に分散しているものであっても、出張所、支所等で、規模が著しく小さく、組織的関連ないし事務能力等を勘案して一の事業という程度の独立性がないもの(例えば、新聞社の通信部)については、直近上位の機構と一括して一の事業として取り扱うこととされている。(昭和33.2.13基発90号)
イ × 労働基準法において「使用者」とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。なお、「賃金」の定義については、正しい。(法10条、11条)
ウ 〇 なお、労働契約は、使用従属関係が認められる労働者と使用者との間において締結される契約を把握する契約類型であり、労働者側からみた場合には、一定の対価を約する契約であるとされている。(法13条、平成20.1.23基発0123004号)
〔問 3〕 正解 E
A 〇 いわゆる「雇止めの予告」の規定である。(法14条2項、令和5.3.30厚労告114号)
B 〇 なお、就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲は、有期労働契約を含む全ての労働契約の締結の際に明示する必要がある。(法15条1項、則5条1項1号の3、5項)
C 〇 したがって、労働契約の締結の際、労働者が労働契約に基づく義務を果たさないため使用者が損害を受けたときは、その損害額に応じて賠償を請求するという契約を締結することは禁止されていない。(法16条、昭和22.9.13発基17号)
D 〇 なお、使用者に義務づけられる利子の率は、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定めることとされており、現在、下限利率は年5厘である。(法18条4項、則5条の2)
E × 就業規則において労働者の退職又は死亡の場合の賃金支払日を通常の賃金と同一日に支払うことを規定している場合であっても、権利者からの請求があれば、使用者は、7日以内に賃金を支払わなければならない。(法23条)
〔問 4〕 正解 A
A × 「500万円以下」ではなく、「100万円以下」である。(則7条の2第1項第3号イ)
B 〇 (則7条の2第1項第3号ロ)
C 〇 (則7条の2第1項第3号ハ)
D 〇 (則7条の2第1項第3号ニ)
E 〇 (則7条の2第1項第3号ヘ)
〔問 5〕 正解 C(三つ)
ア × 設問のような規定はない。常時10人未満の労働者を使用する使用者が1か月単位の変形労働時間制を適用する場合、労使協定(要届出)により、又は就業規則「その他これに準ずるもの」によることとされている。(法32条の2第1項、昭和22.9.13発基17号)
イ 〇 法33条1項は、災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合に「時間外・休日労働」をさせることができる旨規定しているものであり、この場合であっても「休憩」に関する規定は排除されない。(法33条1項、34条1項)
ウ × 次のいずれの要件をも満たす形態で行われる事業場外勤務(テレワーク)については、原則として、法38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されるものと解して差し支えないこととされている。
- 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
- 随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。
(法38条の2、令和3.3.25基発0325第2号)
エ 〇 改正(令和6年4月1日施行)により、専門業務型裁量労働制の導入要件である労使協定の協定事項に「同意に関する事項」が追加されている。(法38条の3第1項6号、則24条の2の2第3項1号)
オ 〇 いわゆる高度プロフェッショナル制度の導入に際しては、労使委員会で所定の事項について決議をし、当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要である。(法41条の2第1項、令和元.7.12基発0712第2号)
〔問 6〕 正解 D
A × 「5労働日」ではなく、「10労働日」である。設問の労働者は、週の所定労働日数が5日であるため、年次有給休暇の比例付与(週所定労働時間30時間未満、かつ、週所定労働日数4日以下)の対象とならない。(法39条1項、3項、則24条の3第4項)
B × 「7労働日」ではなく、「10労働日」である。設問の労働者は、週の所定労働時間が32時間であるため、年次有給休暇の比例付与(週所定労働時間30時間未満、かつ、週所定労働日数4日以下)の対象とならない。(法39条1項、3項、則24条の3第4項)
C × 設問の場合、通常は、10月1日から翌年9月30日までの1年間に5日取得させることになるが、4月1日に前倒しで付与しているため、令和6年4月1日から「令和7年3月31日まで」の1年間に5日取得させなければならない。(法39条7項、則24条の5第1項、平成30.12.28基発0907第15号)
D 〇 なお、則24条の6第1項の規定により労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合において、法39条7項の年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことも差し支えないこととされている。(法39条7項、8項、平成30.12.28基発1228第15号)
E × 産前産後の休業期間については、出勤したものとみなされるが、生理休暇については、出勤したものとはみなされない。(法39条10項、平成22.5.18基発0518第1号)
〔問 7〕 正解 A
A × 絶対的必要記載事項の一部、又は相対的必要記載事項を記載しない就業規則も有効である。ただし、使用者は、法89条違反となる。(法89条、平成11.3.31基発168号)
B 〇 なお、寄宿舎規則(建設物及び設備の管理に関する事項を除く。)の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならず、届出をなすについて、当該同意を証明する書面を添付しなければならない。(法95条1項)
C 〇 なお、別個の就業規則を作成する場合は、就業規則の本則において当該別個の就業規則の適用の対象となる労働者に係る適用除外規定又は委任規定を設けることが望ましいとされている。(法89条、平成11.3.31基発168号)
D 〇 なお、介護休業についても同様である。(法89条、平成11.3.31基発168号)テキストP106
E 〇 いわゆる法41条該当者に適用されないのは、労働時間、休憩、休日に関する規定のみである。(法89条、昭和23.12.25基発4281号)
〔問 8〕 正解 B
A 〇 W社にある本社は、常時使用する労働者数が30人であり、「その他の業種」に該当するため、安全管理者(屋外産業的業種又は屋内産業的工業的業種で、常時使用する労働者数が50人以上)も衛生管理者(業種を問わず、常時使用する労働者数が50人以上)も選任する義務はない。(法11条1項、12条1項、令2条3号、3条、4条、昭和47.9.18基発91号)
B × W社にある本社は、常時使用する労働者数が30人であり、「その他の業種」に該当するため、常時使用する労働者数が1,000人以上でなければ、総括安全衛生管理者を選任する義務はない。(法10条1項、令2条3号、昭和47.9.18基発91号)
C 〇 X市にある第1工場は、常時使用する労働者数が300人(200人を超え、500人以下)であるため、衛生管理者を2人以上選任しなければならない。(法11条1項、12条1項、則7条1項4号)
D 〇 5台以上の動力プレス機械を有する事業場での当該機械による作業を行う場合、プレス機械作業主任者を選任しなければならない。また、交替制で行われる作業において、ボイラー取扱作業主任者、第1種圧力容器取扱作業主任者及び乾燥設備作業主任者「以外」の作業主任者については、各直ごとに選任しなければならない。(法14条、令6条7号、則16条1項、別表第1、昭和48.3.19基発145号)
E 〇 Z市にある営業所は、常時使用する労働者数が12人であり、「その他の業種」に該当するため、衛生推進者(その他の業種で、常時使用する労働者数が10人以上50人未満)を選任しなければならない。(法12条の2、則12条の2、昭和47.9.18発基91号、昭和47.9.18基発602号)
〔問 9〕 正解 D
A 〇 なお、設問は、則52条の2第1項(面接指導の対象となる労働者の要件)の規定であり、実際に面接指導を行うためには、則52条の3第1項(面接指導の実施方法)の規定により、労働者の申出によることとなる。(法66条の8第1項、則52条の2第1項)
B 〇 なお、設問の「新たな技術、商品又は役務の研究開発に従事する者に対する面接指導」については、一般の労働者と異なり、労働者からの申出がない場合であっても、実施しなければならない。(法66条の8の2第1項、則52条の7の2)
C 〇 設問の「労働者の労働時間の状況についての把握」は、高度プロフェッショナル制度の対象者を除き、すべての労働者について行わなければならない。(法66条の8の3、平成31.3.29基発0329第2号)
D × 法66条の8(一般の労働者に対する面接指導)については、設問のとおりであるが、法66条の8の2(新たな技術、商品又は役務の研究開発に従事する者に対する面接指導)については、労働者の申出の有無にかかわらず行うこととされているため、労働時間に該当し、賃金の支払いが必要となる。なお、面接指導に要する費用についての記述は正しい。(法66条の8第1項、66条の8の2第1項、平成18.2.24基発0224003号、平成31.3.29基発0329第2号)
E 〇 なお、派遣労働者の労働時間については、実際の派遣就業した日ごとに始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間について、労働者派遣法42条3項に基づき派遣先が派遣元の事業者に通知することとなっている。(法66条の8第1項、労働者派遣法45条1項から3項、平成18.2.24基発0224003号)
〔問10〕 正解 C
A × 「14日前までに」ではなく、「30日前までに」である。(法88条1項)
B × 「都道府県労働局長に」ではなく、「厚生労働大臣に」である。(法88条2項)
C 〇 なお、土石採取業に属する事業についても同様である。(法88条3項)
D × 危険な作業を必要とするものとして計画の届出が必要とされるクレーンから除かれるのは、つり上げ荷重が「0.5トン未満」のものである。(法88条1項、則85条、クレーン則2条1号、44条)
E × 圧力能力が5トン未満であっても、計画の届出が必要である。(法88条1項、則85条、別表第7第1号)