冬休みの友・第1回解答

労働基準法

【総則】

問1 法1条にいう「労働条件」とは、賃金、労働時間、解雇、災害補償等の基本的な労働条件を指し、安全衛生、寄宿舎に関する条件は含まれない。

答1 × 法1条にいう「労働条件」とは、賃金、労働時間はもちろんのこと、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎に関する条件をすべて含む「職場における一切の待遇」をいう。(法1条、昭和63.3.14基発150号)テキストP12未記載

【コメント】

労働基準法の条文中、「労働条件」という言葉に一定の制限がかかるのは、法15条の「労働条件の明示(絶対的明示事項と相対的明示事項に限定されている。)」のみです。

 

問2 法3条が差別禁止事由として掲げている「信条」とは、政治的信条や思想上の信念を意味し、そこには宗教上の信仰は含まれない。

答2 × 法3条にいう「信条」とは、特定の宗教的若しくは政治的信念をいうため、宗教上の信仰も含まれる。(法3条、昭和22.9.13基発17号)テキストP14

【コメント】

問題文にある法3条(均等待遇)「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。」は、頻出事項です。「国籍、信条又は社会的身分」という限定列挙の部分(性別は含まれていない。)がポイントです。

また、「社会的身分」とは、生来の身分(部長とか課長などの職制上の身分ではなく、犯罪者の子とか被差別部落出身者などの生まれつきの身分)をいいます。

 

問3 法4条は、賃金についてのみ女性であることを理由とする男性との差別的取扱いを禁止したものであり、その他の労働条件についての差別的取扱いについては同条違反の問題は生じない。

答3 〇 なお、差別的取扱いをするとは、不利に取扱う場合のみならず有利に取扱う場合も含まれる。(法4条、平成9.9.25基発648号)テキストP14

【コメント】

このことは、法3条(均等待遇)についても同様です。

 

問4 法6条は、「何人も、法律によって許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」としているが、その規制対象は、私人たる個人又は団体に限られ、公務員は規制対象とならない。

答4 × 法6条違反行為の主体は、「他人の就業に介入して利益を得る」第三者であって、「何人も」とは、本条の適用を受ける事業主に限定されず、個人、団体又は公人たると私人たるとを問わない。したがって、公務員であっても違反行為の主体となる。(法6条、昭和23.3.2基発381号)テキストP15

【コメント】

条文の書き出しに「何人も(どんな人も)」とあるので、世の万人が対象となります。

 

問5 法7条は、労働者が労働時間中に、公民権を行使するために必要な時間を請求した場合には、使用者はこれを拒んではならないとし、また、当該時間を有給扱いとすることを求めている。

問5 × 公民権行使の時間を有給扱いとすることは求められていない。なお、問題文の前段は、そのとおりである。(法7条、昭和22.11.27基発399号)テキストP16

【コメント】

労働基準法の問題は、「数字が論点」のものが少ないため、「結論が論点」になりやすい傾向があります。もし、知らない問題が出たら、「常識」で判断しましょう。

 

【労働基準法の適用】

問6 労働者派遣における派遣労働者については、派遣元及び派遣先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、派遣元及び派遣先については、それぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法の適用がある。

問6 × 派遣労働者に関しては、労働基準法は、原則として、当該派遣労働者と労働契約関係にある派遣元の事業について適用されるが、労働時間、休憩、休日等の労働者の具体的就業に関連する規定については、その枠組みの設定(労使協定の締結等)に係るもの等を除き、派遣先の事業についても適用される。(労働者派遣法44条)テキストP18

【コメント】

「派遣労働者」は、労働者派遣法44条に基づき、労働基準法の規定ごとに「元、先、双方」で使用者責任を区分して分担します。関連事項として、「在籍出向者」は問題文のように労働契約関係が存する限度で「元、先」で使用者責任を区分して分担、「移籍出向者」はオール「先」です。

 

問7 労働基準法は、農林の事業や畜産又は水産の事業についても適用されるが、これらの事業に従事する労働者については、同法第4章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない。

答7 × 林業については労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用を除外されていない。(法41条1号)テキストP53

【コメント】

定番の引っ掛け問題ですね。「法41条該当者」については、選択式に良く登場するので、他のメンバーもしっかり押さえておきましょう。

 

問8 労働基準法は、家事使用人については適用しないこととされているが、個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令の下に家事を行う者は、家事使用人に該当する。

答8 × 個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令の下に家事を行う者は、家事使用人に該当しない。(法116条2項、昭和63.3.14基発150号)テキストP17

【コメント】

いわゆる家政婦さんですね。雇用保険法の「被保険者となるかならないか」も同様ですが、とにかく問題文の中に「雇われて」という文言があれば、試験対策上は間違いなく労働者です。

 

問9 労働基準法は、同居の親族のみを使用する事業については、適用しないこととされているが、同居の親族であっても、①常時親族以外の労働者を使用する事業において、一般事務又は現場作業等に従事していること、②業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること、③就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること、のすべての要件を満たす場合には、労働者として取り扱われる。

答9 〇 (法116条2項、昭和54.4.2基発153号)テキストP17未記載

【コメント】

同居の親族が「労働者」として取り扱われることのポイントは、少なくとも他人が1人いて、その他人と同じような働きぶりであることですね。

 

問10 船員法の適用を受ける船員については、その労働の特殊性から、労働基準法は全面的に適用が除外されており、当該船員の労働条件の基準については、船員法の規定するところによるものとされている。

答10 × 船員法の適用を受ける船員については、労働基準法の総則(平均賃金に関する規定を除く。)及びこれに関する罰則規定等は適用がある。(法116条1項)テキストP17

【コメント】

勝手解釈ですが、自分を包み込むもの(国(国家公務員)、家(家事使用人)、親(同居の親族のみ)は全部除外、足元にあるもの(地(地方公務員)、海(船員))は一部除外です。

 

【平均賃金】

問11 賃金締切日が毎月月末と定められていた場合において、例えば7月31日に算定事由が発生したときは、同日から遡った3か月が平均賃金の算定期間となる。

答11 × 平均賃金の算定期間については、賃金締切日がある場合、算定事由発生日(設問の場合、7月31日)の直前の賃金締切日から起算する。したがって、設問の場合、直前の賃金締切日である6月30日から遡った3か月が平均賃金の算定期間となる。(法12条2項)テキストP41

【コメント】

設問の場合、「7月31日」の途中に算定事由が発生しているため、算定事由発生日の「直前」の賃金締切日は、「6月30日」となります。

 

問12 平均賃金の算定期間中に「業務上の傷病による療養のための休業期間」がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、平均賃金の算定期間及びその算定期間中の賃金の総額から控除する。

答12 〇 以下の期間中の日数及び賃金は、平均賃金の算定期間及びその算定期間中の賃金の総額から控除しなければならない。

① 業務上の傷病による休業のための休業期間

② 産前産後の休業期間

③ 育児・介護休業期間

④ 使用者の責に帰すべき事由による休業期間

⑤ 試みの使用期間

(法12条3項)テキストP42

【コメント】

「ぎょう(業)さん(産)飼(使)育(育)開(介)始(試)する」は、昔からの定番論点です。

 

問13 年俸制における平均賃金の算定については、年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合には、賞与部分を除いた年俸額の12分の1を1箇月の賃金として平均賃金を算定する。

答13 × 年俸制における平均賃金の算定については、年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合には、賞与部分を含めた年俸額の12分の1を1箇月の賃金として平均賃金を算定する。(法12条1項、平成12.3.8基収78号)テキストP41未記載

【コメント】

労働基準法上のボーナスの概念は、「多いか少ないか、あるかないか、ドキドキしながら貰うもの=不確定のもの」ということになっているからです。

 

問14 平均賃金の算定に当たり、家族手当、通勤手当及び住宅手当は算入しない。

答14 × 設問の手当は、算入しなければならない。なお、平均賃金の算定に当たり、臨時に支払われた賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しないこととされている。(法12条4項)テキストP42

【コメント】

割増賃金の算定基礎としないもの「勝(家族手当)つ(通勤手当)べ(別居手当)し(子女教育手当)リ(臨時に支払われた賃金)ーチ一(1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)発マイホーム(住宅手当)」とのひっかけ問題ですね。

 

問15 雇入れ後3か月に満たない者について平均賃金を算定する場合は、賃金締切日の有無にかかわらず、その事由の発生の日から計算を行う。

答15 × 雇入れ後3か月に満たない者について平均賃金を算定する場合は、賃金締切日があるときは、直前の賃金締切日から起算する。ただし、直前の賃金締切日より計算すると、未だ一賃金算定期間(1か月を下らない期間)に満たなくなる場合には、事由の発生の日から計算を行うこととする。(法12条6項、昭和27.4.21基収1371号)テキストP42

【コメント】

平均賃金は、「I LOVE 賃金締切日」です。

 

【賃金の支払】

問16 派遣中の労働者の賃金を派遣先の使用者を通じて支払うことについては、派遣先の使用者が、派遣中の労働者本人に対して、派遣元の使用者からの賃金を手渡すことだけであれば、直接払の原則には違反しないものである。

問16 〇 なお、法24条1項は、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも本条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である。ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えない。(法24条1項、昭和61.6.6基発333号)テキストP44

【コメント】

試験対策上の「賃金の直接払い」の主な例外は、設問の場合と「使者払い」です。

 

問17 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賞与及び退職金の支払について、口座振込みによることができるほか、いわゆる銀行振出小切手、銀行支払小切手、普通為替等を交付する方法によることができる。

問17 × いわゆる銀行振出小切手、銀行支払小切手、普通為替等を交付する方法によることができるのは、「退職手当」の支払に限られる。(法24条1項、則7条の2第1項)テキストP43

【コメント】

退職手当は桁違いの金額になることがある(財布に入らない!?)からです。

 

問18 労働協約の定めによって通貨以外のもので支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られる。

答18 〇 (法24条1項、昭和63.3.14基発150号)テキストP44

【コメント】

結果として、現物給与の支給対象者は、原則として、労働組合の組合員に限られることになります。

 

問19 法24条1項の賃金全額払の原則は、労働者が退職に際し自ら賃金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、その意思表示の効力を否定する趣旨のものと解することができ、それが自由な意思に基づくものであることが明確であっても、賃金債権の放棄の意思表示は無効である、とするのが最高裁判所の判例である。

答19 × 設問の場合、労働者の自由な意思に基づくものであることが明確であるときは、賃金債権の放棄の意思表示は有効であるとするのが最高裁判所の判例である。(最判昭和48.1.19「シンガー・ソーイング・メシーン事件」)テキストP44

【コメント】

この判例のキーワード(選択式のターゲットともなる言葉)は、フリーストーン(自由な意思)です。

 

問20 賞与を支給日に在籍している者に対してのみ支給する旨のいわゆる賞与支給日在籍要件を定めた就業規則の規定は無効であり、支給日の直前に退職した労働者に賞与を支給しないことは、賃金全額払の原則を定めた法24条1項に違反する、とするのが最高裁判所の判例である。

答20 × 設問の場合、賞与をその支給日現在の在籍者のみに支給する旨の慣行を明文化した就業規則は有効であるとするのが最高裁判所の判例である。(最判昭和57.10.7「大和銀行事件」)テキストP45

【コメント】

択一式の判例問題のほとんどの論点は、「結論」にあります。(ハンケツです。)テキストや過去問に登場する判例は、しっかり結論を押さえましょう。

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