本日の受験弁当
〔問1〕択一式定番問題(労働安全衛生法)
事業者は、常時1,000人を超える労働者を使用する事業場にあっては、2人以上の産業医と1人以上の専任の衛生管理者を選任しなければならない。
〔問2〕判例選択式(労働基準法)
最高裁判所の判例によると、ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって、使用者がこれに介入して制御することはできず、また、団体交渉において組合側にいかなる回答を与え、どの程度譲歩するかは使用者の自由であるから、団体交渉の決裂の結果ストライキに突入しても、そのことは、一般に使用者に帰責さるべきものということはできない。したがって、労働者の一部によるストライキが原因でストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となった場合は、使用者が【 A 】の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」には当たらず、当該不参加労働者は賃金請求権を失うと解するのが相当である。
ところで、労働基準法26条が「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合に使用者が平均賃金の6割以上の手当を労働者に支払うべき旨を規定し、その履行を強制する手段として附加金や罰金の制度が設けられているのは、右のような事由による休業の場合に、使用者の負但において労働者の生活を右の限度で保障しようとする趣旨によるものであって、同条項が民法536条2項の適用を排除するものではなく、当該休業の原因が民法536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」に該当し、労働者が使用者に対する賃金請求権を失わない場合には、休業手当請求権と賃金請求権とは競合しうるものである。そして、両者が競合した場合は、労働者は賃金額の範囲内においていずれの請求権を行使することもできる。したがって、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において、賃金請求権が平均賃金の6割に減縮されるとか、使用者は賃金の支払いに代えて休業手当を支払うべきであるといった見解をとることはできず、当該休業につき休業手当を請求することができる場合であっても、なお賃金請求権の存否が問題となりうるのである。
そこで、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」と民法536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」との異同、広狭が問題となる。休業手当の制度は、右のとおり労働者の【 B 】という観点から設けられたものではあるが、賃金の全額においてその保障をするものではなく、しかも、その支払義務の有無を使用者の帰責事由の存否にかからしめていることからみて、労働契約の一方当事者たる使用者の立場をも考慮すべきものとしていることは明らかである。そうすると、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たっては、いかなる事由による休業の場合に労働者の【 B 】のために使用者に前記の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければならない。このようにみると、右の「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、【 C 】を含むものと解するのが相当である。
- 選択肢A
①不当労働行為 ②強制労働 ③不法行為 ④債務受領拒否
- 選択肢B
①保護 ②所得補償 ③生活保障 ④勤労の権利
- 選択肢C
①事業主の故意又は重大な過失に基づくもの
②天災事変その他やむを得ない事由によるもの
③不可抗力によるもの
④使用者側に起因する経営、管理上の障害
〔答1〕× 常時1,000人を超える労働者を使用する事業場にあっては、1人以上の産業医と4人以上の衛生管理者(そのうち1人は専任)を選任しなければならない。(労働安全衛生規則7条1項4号、15条の2第1項)
〔答2〕A:①不当労働行為 B:③生活保障 C:使用者側に起因する経営、管理上の障害(最判昭和62年「ノース・ウエスト航空事件」)
【ノース・ウエスト航空事件】
1.事案概要
会社Aは、従業員組合による部分ストによって通常業務の遂行が不可能となったため、当該部分ストに参加していなかった労働者Xらに対して休業を命じ、その間の賃金を支払わなかったことから、Xらが当該期間における賃金や休業手当の支払いを求めて争った事案。
2.試験対策上の論点
(1)部分スト(労働組合の組合員の一部だけが参加するストライキ)が行われたことによって、会社から休業命令を受けた争議行為不参加者に民法536条2項の規定により賃金(又は労働基準法26条の規定により休業手当)の請求権は認められるか。
(2)労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」の範囲は、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」の範囲より広いか。
3.試験対策上の結論
(1)認められない。(ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって、使用者がこれに介入して制御することはできず、また、団体交渉において組合側にいかなる回答を与え、どの程度譲歩するかは使用者の自由であるから、団体交渉の決裂の結果ストライキに突入しても、そのことは、一般に使用者に帰責さるべきものということはできない。したがって、労働者の一部によるストライキが原因でストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となった場合は、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」にも当たらず、当該不参加労働者は賃金(又は休業手当)の請求権を失う。)
(2)広い。(「労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害をも含むものである。」
4.択一式出題例(平成24年度、平成26年度)
(1)事業場における一部の労働者のストライキの場合に、残りの労働者を就業させることが可能であるにもかかわらず、使用者がこれを拒否した場合、もともとはストライキに起因した休業であるため、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しない。(× 設問の場合は、ストライキ不参加者の就業が可能であるため、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当する。)
(2)最高裁判所の判例によると、労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」は、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法第536条第2項の「債権者の責めに帰すべき事由」より広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当とされている。
〔答〕○