冬休みの友・第2回解答
労働基準法
【賃金の支払い】
問21 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるが、この場合の労働者の同意については必ずしも書面による必要はない。
答21 〇 労働者の同意については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わないこととされている。テキストP43~44
【コメント】
論点は、「形式は問わないが必ず個別に」同意を得ることです。
問22 使用者は、労働者が出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるため請求する場合においては、支払期日前であっても、次回の賃金支払日に支払うべき賃金を支払わなければならない。
答22 × 設問の「非常時払」の規定に基づき支払わなければならない賃金は、「既往の労働」に対する部分であり、未だ労務の提供のない部分についてまで支払う必要はない。(法25条)テキストP45~46
【コメント】
「既往の労働」という文言は、選択式も意識してください。
問23 最高裁判所の判例によると、適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、法24条1項ただし書によって除外される場合にあたらなくても、その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば同項の禁止するところではないと解されている。
答23 〇 過払いとなった賃金を、過払いとなった時期とごく近いその後の時期において、労働者の経済生活の安定をおびやかさない程度の額で相殺することは、賃金一部控除の労使協定の締結がなくても許されるものとされている。(最判昭和44.12.18「福島県教組事件」)テキストP45
【コメント】
いわゆる「賃金の過払い調整」をするためには、①行使の時期が近接していること(例えば、前月分を今月分で)、②事前にお知らせをして調整する方法をとること、③金額が大きい場合は分割して調整すること、の3つの要件を満たす必要があります。
問24 割増賃金の計算の便宜上、1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる措置は法違反として取り扱わないこととされている。
答24 〇 設問中の「法違反」とは、具体的には「賃金の全額払い違反」のことを指す。(昭和63.3.14基発150号)テキストP44
【コメント】
設問の「1か月」を「1日」にすり替えて来るので注意しましょう!
問25 法26条に定める休業手当は、同条に係る休業期間中において、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、支給する義務は生じない。
答25 〇 労働協約、就業規則又は労働契約によって休日と定められている日については、そもそも労働義務がない日であることから、休業手当を支給する義務は生じない。(法26条、昭和24.3.22基収4077号)テキストP46
【コメント】
常識的に考えてもそうですね。労働基準法は、全科目の中で唯一「覚えていないことでもその場で考えて正解を導き出せることがある」科目です。最後まであきらめずに食らいつきましょう。
【労働契約】
問26 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対し賃金、労働時間その他の労働条件をすべて書面の交付等により明示しなければならない。
答26 × 書面の交付等により明示することが義務付けられているのは、絶対的明示事項(昇給に関する事項を除く。)についてであり、その他の労働条件については、必ずしも書面の交付等により明示する必要はない。(法15条1項、則5条)テキストP25
【コメント】
この問題に限らず、「すべて」という言葉にビビッ!と反応してください。
問27 使用者は、労働者が高度の専門的知識等を有していても、当該労働者が当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就くことがない場合は、契約期間を5年とする労働契約を締結してはならない。
答27 〇 したがって、設問の場合の契約期間の上限は3年となる。(法14条1項、平成15.10.22基発1022001号)テキストP22
【コメント】
契約期間の上限が「5年」とされる「満60歳以上の労働者」については、他に何も制限はありませんが、「高度の専門的知識等を有する労働者」には設問の制限があります。
問28 法15条1項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
答28 〇 なお、ここでいう「明示された労働条件」とは、当該労働者自身に関する労働条件に限られる。したがって、労働契約の締結に当たって自己以外の者の労働条件に附帯条項が明示されていた場合(例えば、労働契約の締結に当たって均衡上他の労働者の賃上げをすることを使用者が約した場合)に、使用者がその条項どおりに契約を履行しないことがあっても、当該労働者は設問の規定によって契約を解除することができない。(法15条2項)テキストP25
【コメント】
「即時に」というところも大切な論点です。
問29 法16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」こととされているが、本条は、金額を予定することを禁止するのであって、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではない。
答29 〇 したがって、労働契約の締結の際、「労働者が労働契約に基づく義務を果たさないため使用者が損害を被ったときは、その損害額に応じて霜害を請求する」という契約を締結することは禁止されていない。(法16条、昭和22.9.13発基17号)テキストP26
【コメント】
頻出論点です。法16条(賠償予定の禁止)は、とにかく「何事も起こっていないのに、賠償金額を予定する」こと(不当拘束)を禁じています。
問30 法17条では、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」こととされているが、労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融、弁済期の繰上等で明らかに身分的拘束を伴わないものは、労働することを条件とする債権には含まれない。
答30 〇 法17条(前借金相殺の禁止)の規定は、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離し、金銭貸借関係に基づく身分的拘束の発生を防止することを、その趣旨としている。(法17条、昭和33.2.13基発90号)テキストP26
【コメント】
「労働することを条件とする」というところと、「相殺(使用者が一方的に給与等から差し引く)」というところがポイントです。
【強制貯蓄の禁止と任意貯金】
問31 使用者は、労働者の福祉の増進を図るため、労使協定に基づき、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をすることができる。
答31 × いかなる場合であっても労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をすることはできない。このことに例外はない。(法18条1項)テキストP27
【コメント】
設問は、「強制貯蓄」に該当します。「働かせてやるから貯金をしろ」は、労働者の不当拘束(貯金を人質に取られ、辞めたくても辞められない)につながるためです。「フズイはマズイ」と覚えましょう。
問32 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、貯蓄金の管理に関する規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。
答32 〇 貯蓄金管理規程には、労使協定で定めた協定事項を中心に、その具体的な取扱い方法が定められることになる。なお、貯蓄金管理規程については、労使協定と異なり行政官庁への届出義務はない。(法18条3項)テキストP27
【コメント】
設問の任意貯金をするためには、労使協定の締結・届出と貯蓄金管理規程の作成・周知が必須条件となります。
問33 金融機関が、使用者としての立場において労働者の委託を受けてその預金の受入れ又は預金通帳の保管を行う場合は、法18条の「労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合」には該当しない。
答33 × 金融機関が、その金融機関たる立場において、銀行法その他の法律に基づく本来の業務として預金の受入れ等を行うのではなくして、使用者としての立場において労働者の委託を受けてその預金の受入れ又は預金通帳の保管を行う場合は、法18条の「労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合」に該当する。(昭和41.12.24基発1359号)テキストP27未記載
【コメント】
たまたま務めた会社が銀行だったということですね。
問34 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入れであるときは、利子をつけなければならないこととされているが、使用者に義務づけられている下限利率は、年5分である。
答34 × 「年5分」ではなく、「年5厘」である。(法18条4項、預金省令4条)テキストP27
【コメント】
「五厘ピックの金利メダル」ですね。任意貯金には、「社内預金」と「通帳保管」の2種類がありますが、「社内預金」は預かったお金を会社で運用して利子を付けることになるため、設問の「下限利率」が規定されています。
問35 法18条5項は、「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、4週間以内に、これを返還しなければならない」と定めている。
答35 × 「4週間以内に」ではなく、「遅滞なく」である。(法18条5項)テキストP27
【コメント】
「適当に誤りを作る」問題です。「4週間以内」という期限は、他の法律にも出てきません。(もし、本当にそうだったら絶対覚えています。)本試験ではこのような「ハッタリ的な入替え」もまま見られますので、敵の作戦にハマらないように気をつけましょう。
【解雇・退職】
問36 使用者は、労働者が「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定によって育児休業又は介護休業をする期間及びその後30日間は、当該労働者を解雇してはならない。
答36 × 事業主は、労働者が育児(介護)休業申出をし、又は育児(介護)休業をしたことを理由として当該労働者を解雇することはできない(育児・介護休業法10条、16条)が、解雇制限期間について設問のごとき規定はない。(法19条)テキストP30~31
【コメント】
良くある「まやかし問題」ですね。本試験で出会ったら肘鉄(又はアンパンチ)をプレゼントしてあげてください。
問37 即時解雇の場合、解雇予告手当は、解雇通告と同時に支払わなければならないが、解雇予告と解雇予告手当を併用する場合の解雇予告手当は、解雇の日までに支払えば足りる。
答37 〇 なお、解雇予告手当は賃金ではないが、通貨払、直接払の原則は、解雇予告手当にも準用される。(昭和23.3.17基発464号、労働基準法コンメンタール)テキストP34
【コメント】
つまり、解雇予告手当は、「さようならを言う日」に払えばよいということですね。
問38 法20条に規定する解雇予告義務に反する解雇については、その通知は無効とされる。
答38 × 予告義務に反する解雇については、その通知は即時解雇としては無効であるが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後所定の30日を経過したとき、又は通知後に所定の予告手当を支払ったときから解雇の効力が生ずると解されている。(最判昭和35.3.11細谷服装事件)テキストP35
【コメント】
なんとなく「労働者保護」に欠ける判決なので、意外性がありますね。裁判長様の虫の居所が悪かったのかもしれません。
問39 解雇制限期間中の労働者であっても、療養補償を受ける労働者が、療養開始後1年6か月を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合に、使用者が、平均賃金の1,200日分の打切補償を支払う場合は、使用者は当該労働者を解雇することができる。
答39 × 「療養開始後1年6か月を経過しても」ではなく、「療養開始後3年を経過しても」である。(法19条)テキストP31
【コメント】
「打切補償は、いちに(1,200日)のさん(3年)で」ですね。
問40 日々雇い入れられる者については、法20条に定める解雇予告に関する規定は適用されない。
答40 × 日々雇い入れられる者が1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合は、解雇予告に関する規定が適用される。(法21条)テキストP35
【コメント】
あちら様が大好きな「解雇予告の適用除外」関連です。選択式にも十分気をつけて。