冬休みの友・第3回解答
労働基準法
【解雇・退職】
問41 解雇予告を行った後、その予告期間満了前にその労働者が業務上負傷し、療養のため休業を要する場合には、原則として、当該休業期間及びその後の30日間に予告期間が満了しても、その満了日にその労働者を解雇することはできない。
答41 〇 解雇予告期間満了前に労働者が業務上負傷し、療養のために休業を要するときは、解雇制限を受け、休業期間及びその後の30日間は、その労働者を解雇することができない。(昭和26.6.25基収2609号)テキストP34
【コメント】
解雇制限期間は、解雇予告期間に優先して適用されます。
問42 労働者に対して20日後に解雇する旨の予告をする場合には平均賃金の10日分以上の解雇予告手当を支払う必要があるが、この場合の平均賃金を算定すべき事由の発生日は、労働者の解雇を決定した日である。
答42 × 「労働者の解雇を決定した日」ではなく、「労働者に解雇の通告をした日」である。(法20条、昭和39.6.12基収2316号)テキストP33、42
【コメント】
いわゆる「到達主義」に基づくものです。「相手に意思が伝わった日」が算定事由発生日となります。
問43 満18歳未満の労働者を解雇し、当該者が解雇の日から30日以内に帰郷する場合においては、使用者は、当該労働者がその責に帰すべき事由に基づいて解雇され、その事由について所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合を除き、必要な旅費を負担しなければならない。
答43 × 「30日以内」ではなく、「14日以内」である。なお、「必要な旅費」には、労働者本人のみならず、就業のため移転した家族の旅費も含まれる。(法64条)テキストP94
【コメント】
労働基準法における数少ない「数字論点」です。「旅のお供に2週刊誌」です。
問44 最高裁判所の判例によれば、「使用者の責めに帰すべき理由によって解雇された労働者が解雇制限期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益の額を賃金額から控除することができるが、平均賃金の4割に達するまでの部分については、利益控除の対象とすることはできない。」とされている。
答44 × 「平均賃金の4割に達するまで」ではなく、「平均賃金の6割に達するまで」である。(最判昭和62.4.2あけぼのタクシー事件)テキストP46
【コメント】
すなわち、「平均賃金の6割に達するまで」の部分については、利益控除の対象とすることができません。この部分については、「休業手当」に相当する部分であり、「休業手当は賃金」であるため、「賃金の全額払いの原則」が適用されるため、勝手に手をつける(相殺する)ことができません。(非常に小難しい判例です。深く追求しないでください。)
問45 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、死亡又は退職の日から7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
答45 × 本条は使用者に対し、「権利者の請求があった日(請求が使用者に到達した日)」から7日以内に、労働者の権利に属する金品を返還すべき義務を課したものである。(法23条)テキストP38
【コメント】
「起算日」論点です。解説にあるように、ここも「到達主義」です。
【割増賃金】
問46 1か月の法定時間外労働が45時間を超えた場合は、その超えた時間の労働については割増賃金率を5割以上とすることとされているが、中小企業については、当分の間、当該時間を超えた場合であっても2割5分以上の割増賃金率で足りる。
答46 × 「45時間を超えた場合」ではなく、「60時間を超えた場合」である。(法37条1項、法附則138条)テキストP81
【コメント】
中小企業については、令和5年4月から「60時間超え、5割以上」の規定が適用されることになっています。
問47 危険作業に従事した場合にのみ支給される危険作業手当は、その危険作業が法定時間外労働として行われたとしても、割増賃金の算定基礎には算入しなくて差し支えない。
答47 × 設問の危険作業手当は、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならない。(法37条、則21条、昭和23.11.22基発1681号)テキストP81
【コメント】
割増賃金の算定基礎の対象とならない賃金は、「勝つべしリーチ一発マイホーム」(家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、住宅手当)です。
問48 1時間当たりの割増賃金の額を法定の割増賃金率に従って計算したときに、1円未満の端数が生じた場合、その端数を切り捨てて処理することは、労働基準法違反としては取り扱わないものとされている。
答 × 設問の場合、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は1円に切り上げて処理することは違反としないが、1円未満の端数を切り捨てて処理することは許されない。(昭和63.3.14基発150号)テキストP44
【コメント】
「端数処理方法」は、各科目の共通論点です。しっかり押さえておきましょう。
問49 週2日の所定休日を定める事業場でその2日とも休日労働させた場合、労働基準法上、休日労働に関し、3割5分以上の割増賃金の支払いが必要とされるのはそのうちの1日のみであり、残る1日については、就業規則の定め等当事者の合意に委ねられる。
答 〇 3割5分以上の割増賃金の対象となる休日は、法35条に定める法定休日のみである。(法37条、昭和63.3.14基発150号)テキストP79
【コメント】
法定休日は、少なくとも週1回あれば良いことになっています。労働基準法は、労働条件の「最低基準」を定めた法律であることを頭の片隅においておきましょう。
問50 変形労働時間制を採用せず、始業時刻が午前8時、終業時刻が午後5時である事業場において、ある労働者が午前8時から午前9時直前まで遅刻した日について、当該労働者を午前9時から午後6時まで労働させた場合、その午後5時から午後6時まで労働した時間については、法37条に基づく割増賃金を支払う必要はない。なお、当該事業場における休憩時間は正午から1時間である。
答50 〇 設問の場合は、1日の労働時間が8時間であるため、時間外労働に係る割増賃金は発生しない。(法37条1項)テキストP79
【コメント】
いつもより遅く家に帰ることになったので、本人は残業気分かもしれませんが…
【みなし労働時間制】
問51 事業場外労働のみなし労働時間制について、労使協定で定めた通常必要とされる時間が法定労働時間を超えない場合には、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。
答51 〇 設問の労使協定については、当該労使協定で定める時間が法定労働時間(8時間)を超える場合にのみ行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならないこととされている。(法38条1項)テキストP58
【コメント】
この労使協定については、あくまでも「任意」であることも併せて押さえておきましょう。
問52 専門業務型裁量労働制に係る労使協定には、1日及び1週間当たりの労働時間を定めなくてはならない。
答52 × 労使協定で定める時間は、その業務の遂行に必要とされる「1日当たり」の労働時間である。なお、労使協定によって定めたみなし労働時間が、1日8時間の法定労働時間を超える場合には、36協定の締結・届出も必要となる。(法38条の3、昭和63.3.14基発150号)テキストP59
【コメント】
事業場外労働、企画業務型裁量労働制によるみなし労働時間についても同様です。
問53 専門業務型裁量労働制の採用に当たり、適用される労働者の同意を得ることについて労使協定で定める必要はない。
答53 〇 なお、企画業務型裁量労働制採用に当たっては、適用される労働者の同意を得ることについて労使委員会による決議を必要とする。(法38条の3)テキストP60
【コメント】
専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制には、いくつかの比較論点があります。確認しておきましょう。
問54 企画業務型裁量労働制に係る労使委員会の決議は、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならないが、届出をしないからといって、企画業務型裁量労働制の効力発生に影響するものではない。
答54 × 設問の労使委員会の決議は、所定の様式により、所轄労働基準監督署長に届出をしなければならず、この届出を行わなければ企画業務型裁量労働制の効力は発生しない。(法38条の4第1項、平成12.1.1基発1号)テキストP61
【コメント】
企画業務型裁量労働制の導入については、対象業務(企画、立案、調査及び分析の業務)が明確に限定されていないため、使用者の濫用を防止する観点から「届け出て初めて効力が発生する」とことしています。
問55 法38条の4第1項に定める労使委員会は、企画業務型裁量労働制の実施に関する決議のほか、労働時間、休憩及び年次有給休暇に関する労働基準法上の労使協定に代替する決議を行うことができるものとされている。
答55 〇 具体的には、労働基準法で定める14個の労使協定のうち、任意貯金に関する労使協定及び賃金の一部控除に関する労使協定を除く12の労使協定について、労使委員会の決議で代替することができる。(法38条の4第5項)テキストP78
【コメント】
「引き金」以外ですね。(任意貯金も賃金の一部控除もお給料から引くお金です。)
【変形労働時間制】
問56 1か月単位の変形労働時間制を採用した場合、変形期間を平均し1週間当りの労働時間が週法定労働時間以内となるようにするために行う変形期間における所定労働時間の総枠の計算は、「その事業場の週法定労働時間×変形期間の労働日数÷7」とされている。
答56 × 設問中の式は、「その事業場の週法定労働時間×変形期間の『暦日数』÷7」である。(平成9.3.25基発195号)テキストP65
【コメント】
1か月単位の変形労働時間制は、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより、「1か月以内の期間を平均して、1週間の労働時間を法定労働時間(40時間、特例対象事業の場合は44時間)以内にすることを要件とするものです。
問57 フレックスタイム制を採用するためには、使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業又は終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとしなければならない。
答57 × 「始業『又は』終業の時刻」ではなく、「始業『及び』終業の時刻」である。(法32条の3第1項)テキストP70
【コメント】
フレックスタイム制は、別名「自由出勤制」といいます。つまり、「いつ来て、いつ帰ってもよい」ということです。よかもんじゃ。
問58 1年単位の変形労働時間において、1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間とされている。
答58 〇 なお、対象期間が3か月を超えるときは、次のいずれにも適合しなければならないこととされている。
① 対象期間において、その労働時間が48時間を超える週が連続する場合の週数が3以下であること。
② 対象期間をその初日から3か月ごとに区分した各期間(3か月未満の期間を生じたときは、当該期間)において、その労働時間が48時間を超える週の初日の数が3以下であること。
(法32条の4第3項、即12条の4第4項)テキストP69
【コメント】
「一麺変形・豚(10)骨(52)ラーメン」ですね。
問59 1週間単位の非定型的変形労働時間制では、緊急でやむを得ない事由がある場合には、あらかじめ通知した労働時間を変更しようとする日の前日までに書面により労働者に通知することで、当初の労働時間を変更することができる。
答59 〇 突発事項に対応できるようにするために設問の規定が設けられている。なお、緊急でやむを得ない事由がある場合とは、使用者の主観的な必要性でなく、台風の接近、豪雨等の天候の急変等客観的事実により、当初想定した業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合が該当する。(則12条の5)テキストP70
【コメント】
1か月単位と1年単位の変形労働時間制は、原則として「一度決めたらそのとおり」にしなければなりませんが、1週間単位の変形労働時間制には設問の例外があります。
問60 1週間単位の非定型的変形労働時間制は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生じることが多い小売業、旅館、料理店及び飲食店で、常時使用労働者数が10人未満の事業を対象とする。
答60 × 「10人未満」ではなく、「30人未満」である。なお、1週間単位の非定型的変形労働時間制は、労使協定を締結することにより、1週間の各日の労働時間を事前に通知することで、1日8時間を超え10時間(1週の労働時間は40時間が限度)まで労働させることができる制度である。(法32条の5、則12条の5)テキストP70
【コメント】
「30歳になるまでに(30人未満)、1週間くらい小(小売)さな旅(旅館)をして食べたり(料理)飲(飲食)んだりしたいなぁ」です。なお、1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、1年単位の変形労働時間制には、業種や事業規模の要件はありません。