「判例道場」第2回
【第1回解答】
労働基準法第114条の付加金支払義務は、使用者が同法第20条の予告手当等を支払わない場合に当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所がその支払を命ずることによって初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に同法第20条の違反があっても、既に予告手当に相当する金額の支払を完了し使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、労働者は同法第114条による付加金請求の申立をすることができないものと解すべきである。
〔選択肢〕
A ① 労働基準監督署長の認定 ② 労働者の申告 ③ 労働基準監督署長の申請 ④ 労働者の請求
〔解説〕
- 科目「労働基準法」:難易度「平易」
- 解答根拠
最判昭和35.3.11「細谷服装事件」、法114条
- 事案概要
Y会社は、その雇用するXに対して、昭和24年8月4日に、予告手当を支給することなしに一方的に解雇の通告をした。その後、1審の口頭弁論の終結日である昭和26年3月19日に至り、昭和24年8月分の給料1万円と予告手当の額として給料1か月分に相当する1万円に当日までの遅延利息を加算した額をXに対して支払った。Xは、解雇の効力は、昭和26年3月19日までは生じなかったと主張して、昭和24年8月分から昭和26年3月分までの賃金の未払い等及び付加金請求を訴えた事案
- 論点
解雇予告手当が遅れて支払われ、その後労働者が裁判所に請求した場合、使用者に付加金支払義務が発生するか
- 結論
発生しない(付加金支払義務は、使用者が予告手当等を支払わない場合に、当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所がその支払を命ずることによって、初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に労働基準法20条の違反があっても、既に予告手当に相当する金額の支払を完了し使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、労働者は同条による付加金請求の申立をすることができない)
【第2回問題】
大学新規卒業予定者で特定企業との間の採用内定者の地位は、一定の B を付して雇用関係に入った者の B 中の地位と基本的には異なるところはないので、 B における留保解約権行使に関する法理が、採用内定期間中の留保解約権の行使についても同様に妥当するものと考えられる。したがって採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限り認められる。
〔選択肢〕
B ① 契約期間 ② 存続期間 ③ 試用期間 ④ 研修期間