「判例道場」第17回
【第16回解答】
採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。
〔選択肢〕
① 解約権留保 ② 労働契約 ③ 誓約書 ④ 解約権行使
〔解説〕
- 科目「労働基準法」:難易度「平易」
- 解答根拠
最判昭和54.7.20「大日本印刷事件」
- 事案概要
学生Xは、会社Aの翌年3月卒業予定者の求人募集に応募し、7月に採用内定通知を受け、誓約書も送付したが、翌年2月にグルーミー(陰気)な印象であることを理由に採用内定を取り消されたため、その無効を訴えた事案
- 論点
採用内定の取消しは、どのような場合に有効となるのか
- 結論
「内定当時知ることができない事実」を理由とするものであれば有効(採用内定通知に対する誓約書等の提出は、解約権を留保した労働契約(※)が成立したものと解されるため)
※)「解約権を留保した労働契約」とは…「就労開始時までに採用内定通知書や誓約書に記載された採用内定取消し事由が生じた場合には、使用者から労働契約を解除出来るとする合意が含まれている(特殊な)労働契約」のこと。
〔第17回問題〕
憲法は、 A の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、財産権の行使、営業その他広く経済活動の事由をも基本的人権として保障している。それゆえ、起業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いななる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、企業者が特定の A を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。
〔選択肢〕
① 言論 ② 思想、信条 ③ 精神 ④ 社会的身分