「判例道場」第26回

【第25回解答】

法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。

このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと、前年度の総暦日の中で、就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や使用側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として、上記出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれると解するのが相当である。

〔選択肢〕

C ① 当事者間の衡平等 ② 無過失責任等 ③ 法の下の平等 ④ 過失責任等

D ① 影響を与えない ② 含まれない ③ 影響を与える ④ 含まれる

 

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「難問」
  • 解答根拠

最判平成25.6.6「八千代交通事件」

  • 事案概要

会社Aから解雇され2年以上に渡り就労を拒まれた労働者Xが、裁判で解雇無効を勝ち取って復職した後、合計5日間の年次有給休暇を請求したところ、会社Aは、「解雇された日から勝訴により復職した日までの期間は、使用者の責任により就労できなかったのであるから、その期間については全労働日が0日となり、年次有給休暇の成立要件を満たしていない」として年次有給休暇の取得を認めず欠勤扱いとしたため、Xがその無効を訴えた事案

  • 論点

不当解雇によって就労できなかった日については、年次有給休暇の権利発生にかかる出勤率の算定において、「全労働日」及び「出勤日数」に算入すべきか

  • 結論

算入すべき(無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働者の責めにすべき事由によるとはいえない不就労日であり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。)

〔第26回問題〕

36協定は、実態上、使用者と、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、そのような労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間において締結されたものでなければならないことは当然である。〔…中略…〕

そこで、36協定の締結当事者であるYが「労働者の過半数を代表する者」であったか否かについて検討するに、「労働者の過半数を代表する者」は当該事業場の労働者により適法に選出されなければならないが、適法な選出といえるためには、当該事業場の労働者にとって、選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる E 手続がとられていることが必要というべきである。

〔選択肢〕

① 民主的な ② 客観的な ③ 合理的な ④ 公明正大な

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