「判例道場」第27回

【第26回解答】

36協定は、実態上、使用者と、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、そのような労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間において締結されたものでなければならないことは当然である。〔…中略…〕

そこで、36協定の締結当事者であるYが「労働者の過半数を代表する者」であったか否かについて検討するに、「労働者の過半数を代表する者」は当該事業場の労働者により適法に選出されなければならないが、適法な選出といえるためには、当該事業場の労働者にとって、選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていることが必要というべきである。

〔選択肢〕

① 民主的な ② 客観的な ③ 合理的な ④ 公明正大な

 

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「平易」
  • 解答根拠

最判平成13.6.22「トーコロ事件」

  • 事案概要

眼精疲労などを理由に時間外労働を拒否した労働者に対する解雇が正当かという争いの中で、その時間外労働の根拠となる36協定の労働者側締結当事者(友の会(労働者の親睦団体)の会長)が労働基準法にいう「労働者の過半数を代表する者」といえるか否かが解雇の是非の焦点となった事案

  • 論点

労働者の過半数代表でない(使用者が指名した)労働者と締結した36協定は有効か

  • 結論

無効(「労働者の過半数を代表する者」は当該事業場の労働者により適法に選出されなければならないが、適法な選出といえるためには、当該事業場の労働者にとって、選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていることが必要というべきである。)

〔第27回問題〕

使用者がその企業の従業員に対して金品の不正隠匿の摘発・防止のために行う、いわゆる所持品検査は、被検査者の A に関する問題であって、その性質上つねに人権侵害のおそれを伴うものであるから、たとえ、それが企業の経営・維持にとって必要かつ効果的な措置であり、他の同種の企業において多く行われるところであるとしても、また、それが労働基準法所定の手続を経て作成・変更された就業規則の条項に基づいて行われ、これについて従業員組合または当該従業員の過半数の同意があるとしても、そのことの故をもって、当然に適法視されるものではない。

問題は、その検査の方法ないし程度であって、所持品検査は、これを必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも制度として、職場従業員に対して B 実施されるものでなければならない。

そして、このようなものとしての所持品検査が、就業規則その他、明示の根拠に基づいて行われるときは、他にそれに代わるべき措置をとりうる余地が絶無でないとしても、従業員は、個別的な場合にその方法や程度が妥当を欠く等、特段の事情がないかぎり、検査を受忍すべき義務がある。

〔選択肢〕

A:① 基本的人権 ② 素行 ③ 信用 ④ 含む

B:① 定期的に ② 一斉に ③ 画一的に ④ 個別に

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