「判例道場」第24回

【第23回解答】

原審の確定した事実関係のもとにおいては、Y社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められない。

したがって、Y社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。

〔選択肢〕

① 功労報償 ② 成果給 ③ 老後の生活保障 ④ 賃金の後払い

〔解説〕

  • 科目「労働基準法」:難易度「平易」
  • 解答根拠

最判昭和52.8.9「三晃社事件」

  • 事案概要

「競業会社への就職をしたときは退職金支給額を半額とする」という就業規則の定めがあるにもかかわらず、退職金を全額受け取った者が同業他社へ転職したため、受け取った退職金の半額の返還を求めて(会社が)訴えた事案

  • 論点

競業避止義務(退職した従業員に一定期間同業他社への就職を禁止すること)に違反した場合に、退職金の半額を減額するという規定は有効か(「賠償予定の禁止」に違反しないか)

  • 結論

有効(X社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがって、X社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。)

〔第24回問題〕

法24条1項本文の定めるいわゆる賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の A を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその B 意思に基づき相殺に同意した場合においては、同意が労働者の B 意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、同意を得てした相殺は右規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である。

〔選択肢〕

A ① 職業生活 ② 経済生活 ③ 人たるに値する生活 ④ 家庭生活

B ① 一方的な ② 積極的な ③ 自由な ④ 能動的な

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